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大阪地方裁判所 昭和59年(ワ)567号 判決 1992年7月23日

広島市安芸区中野東七丁目二六番一九号

原告

株式会社トーワテクノ

(旧商号・東和製機株式会社)

右代表者代表取締役

杉山肇

右訴訟代理人弁護士

林弘

中野建

松岡隆雄

右林弘及び中野建輔佐人弁理士

菊池武胤

大阪府守口市南寺方東通五丁目八八番地の二

被告

株式会社鈴木鉄工所

右代表者代表取締役

鈴木允

右訴訟代理人弁護士

小林勤武

服部素明

三上孝孜

國本敏子

梅田章二

右小林勤武輔佐人弁理士

丸山敏之

主文

一  被告は、原告に対し、金二六九万円及びこれに対する昭和五九年二月五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを二分し、その一を原告の負担、その余を被告の負担とする。

四  この判決の第一項は仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  請求の趣旨

被告は、原告に対し、金一〇〇〇万円及びこれに対する昭和五九年二月五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

一  原告の特許権

1  原告は次の各特許権(以下順次「本件特許権一」「本件特許権二」といい、その特許を順次「本件特許一」「本件特許二」、その特許発明を順次「本件発明一」「本件発明二」という。)を有していた(甲一、二、乙四、五)。

(一) 発明の名称 海苔の自動連続包装装置に於ける切断直後の海苔送り機構

出願日 昭和三九年七月二七日(特願昭四三-四〇九九六号)

出願公告日 昭和四五年一一月二五日(特公昭四五-三七〇六七号)

設定登録日 昭和四六年六月二八日

登録番号 第六一〇七九二号(登録抹消済)

存続期間満了 昭和五九年七月二七日

特許請求の範囲

「夫々の平坦面で互いに摩接するようにした片刃構造からなる一対の回転刃の直後に占位する移送路を前記回転刃によって区劃される区分毎に設け、これら移送路を互に隣接する移送路毎に交互に高低差を付与すべく前記移送路の始端の上下の指向方向を交互に相違させ隣接する移送路が同一平面を構成せざるべくなし、該移送路に沿って移動する移動部材を以って切断海苔片を移送路上を移送すべくなしたことを特徴とする海苔の自動連続包装装置に於ける切断直後の海苔送り機構。」(添付の特公昭四五-三七〇六七号特許公報〔以下「公報一」という。〕参照)

(二) 発明の名称 海苔の自動連続包装装置に於ける切断移送機構

出願日 昭和三九年七月二七日(特願昭四二-四五八一四号)

出願公告日 昭和四八年一月一八日(特公昭四八-一五一五号)

設定登録日 昭和四八年八月九日

登録番号 第六九九二〇三号(登録抹消済)

存続期間満了 昭和五九年七月二七日

特許請求の範囲

「積層海苔片の移動域に対して上側と下側に対向させて並設した一対の回転軸と、片刃構造からなりその平坦面を少なくとも上記移動域で摩接させて対を構成しこの複数対を前記回転軸に間隔的に配設した切断刃と、交互に少なくとも傾斜部を形成し前記切断刃により切断された積層海苔の相隣れる寸断片に高低差を附与し各寸断片を分離する前記切断刃の直後に位置する分離案内路と、上記分離案内路に高低差を附与した始端部を対応させてなる誘導樋と、前記切断刃、分離案内路、誘導樋に沿って積層海苔片を移送する為の部材とから構成し上記誘導樋を放射状に延長設置させたことを特徴とする海苔の自動連続包装装置に於ける切断移送機構。」(添付の特公昭四八-一五一五号特許公報〔以下「公報二」という。〕参照)

2  本件発明一の構成要件及び作用効果(甲一)

(一) 本件発明一は次の構成要件からなる。

(1) 夫々の平坦面で互いに摩接するようにした片刃構造からなる一対の回転刃を有すること。

(2) 前記回転刃の直後に占位する移送路を前記回転刃によって区劃される区分毎に設けること。

(3) これら移送路を互に隣接する移送路毎に交互に高低差を付与すべく前記移送路の始端の上下の指向方向を交互に相違させ隣接する移送路が同一平面を構成せざるべくなすこと。

(4) 該移送路に沿って移動する移動部材を以って切断海苔片を移送路上を移送すべくなすこと。

(5) 海苔の自動連続包装装置に於ける切断直後の海苔送り機構であること。

(二) 本件発明一の作用効果は次のとおりである。

切断直後に於いて切断した寸断積層海苔片を上下に高低差を付与したから、各積層海苔片を、互に隣接する海苔片と摩接する惧もなく、従って摩接による裂損を生ずることなく、而も積層状態を乱すこともなく円滑に夫々を独立して移送することができる。

3  本件発明二の構成要件及び作用効果(甲二)

(一) 本件発明二は次の構成要件からなる。

(1) 積層海苔片の移動域に対して上側と下側に対向させて並設した一対の回転軸と、片刃構造からなりその平坦面を少なくとも上記移動域で摩接させて対を構成しこの複数対を前記回転軸に間隔的に配設した切断刃を有すること。

(2) 交互に少なくとも傾斜部を形成し前記切断刃により切断された積層海苔の相隣れる寸断片に高低差を附与し各寸断片を分離する前記切断刃の直後に位置する分離案内路を有すること。

(3) 上記分離案内路に高低差を附与した始端部を対応させてなる誘導樋を有すること。

(4) 前記切断刃、分離案内路、誘導樋に沿って積層海苔片を移送する為の部材を有すること。

(5) 上記誘導樋を放射状に延長設置させたこと。

(6) 海苔の自動連続包装装置に於ける切断移送機構であること。

(二) 本件発明二の作用効果は次のとおりである。

積層海苔片を切断後、交互に少なくとも傾斜部を形成した分離案内路に導き相隣れる海苔の寸断片を高低差を附与した誘導樋に導くような構成であるから寸断された積層海苔片の寸断片は揃った状態で確実に分離せられ、各組の寸断片を斉一したままの状態で引続く包装機構へ送ることが可能となり包装機構の作動に寄与するところが大きいことは勿論、搬送上至難な海苔の搬送を寸断積載したままの状態で送り得る上で実益する効果大なるものがある。更に誘導樋を放射状に延長設置させたから、各誘導樋の終端を全て同高位置に揃えることができ、この誘導樋に交叉する一本の搬送機構上に各海苔片を等間隔をもたせて移し換えることができる効果を有する。

二  本件発明一、二の出願経過

1  本件発明一、二についての特許出願は、特許法四四条一項(昭和四五年法律第九一号による改正前〔同条については以下同じ〕)の規定に基づき、名称を「海苔の自動連続包装々置に於ける切断送り込み機構」とする発明について昭和三九年七月二七日にした特願昭三九-四二七一二号特許出願(以下「原出願」という。)の一部を新たな特許出願(以下「分割出願」という。)としたものであり(甲一、二、九、乙七、二〇の1~3)、本件発明一の分割出願日は昭和四三年六月一五日、本件発明二の分割出願日は昭和四二年七月一八日である(弁論の全趣旨)。

原出願の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下「原出願の明細書及び図面」という。)の記載は、添付の特公昭四三-一一七四三号特許公報(以下「原公報」という。)記載のとおり(但し、2頁左欄24行の「低」は「高低」の、同右欄6、7行の「延長設置されると誘導樋」は「延長設置される誘導樋」の各誤記と認められる。)である(甲九、乙七、二〇の1~3)。また、原出願の明細書及び図面について補正したことを窺わせる証拠はないので、各分割出願の時及び分割後における明細書及び図面の記載も右と同一と推認される。

2  原出願は、次のとおり出願公告及び設定登録され、原告が特許権を有していた(乙六)。

出願公告日 昭和四三年五月一七日(特公昭四三-一一七四三)

設定登録日 昭和四三年一〇月三一日

登録番号 第五三〇五六五号(登録抹消済)

存続期間満了 昭和五八年五月一七日

3  原出願の特許請求の範囲第1項記載の発明(以下「原出願1項発明」という。)は次の構成要件AないしF及びHからなり、同2項記載の発明(以下「原出願2項発明」という。)は次の構成要件AないしHからなる(甲九、乙七)。

A 夫々の平坦面で互いに摩接するようにした片刃構造からなる一対の回転刃を並列した上下の回転軸を有すること。

B 此等各対の回転刃の切断面によって区画される各空間を始端部として放射状に延長設置される誘導樋を有すること。

C 該誘導樋に沿って寸断された積層海苔片を移送する為の部材を有すること。

D 前記誘導樋は切断直後の行程部分で互に隣接する樋ごとに交互に高低差を附与して配置すること。

E 誘導樋は夫々の内法幅員について各切断海苔片の幅より大なる幅員を与えるべく垂直面に於て適宜の重なりを保持させること。

F 此等高低差を有する誘導樋は少なくとも搬送終端に達する迄の間に同高位に復元させて構成すること。

G 積層海苔片の移送部材は各放射状をなす誘導樋に沿って移動させるべく設けるとともに移送部材は少なくとも上下に於て回転刃の回転軸間を左右に於ては対をなす切断刃間を通過すべく循環路を設定すること。

H 海苔の自動連続包装々置に於ける切断送り込み機構であること。

4  原出願1項発明及び原出願2項発明の作用効果は次のとおりである(甲九、乙七)。

回転刃の回転により短冊状積層海苔片は寸断されて交互に高低の各誘導樋に区分されて送り込まれ、循環する押進部材に押されて樋に沿ってその終端域にもたらされるが、誘導樋について一旦高低差を与えてあるので、切断後の積層海苔片は搬送上引きかかりを生じたり切損裂損したりすることなく、極めて円滑に積層状態を崩すことなく搬送され、終端域では同時に切断された各組の積層海苔片を斉一したままの状態で同時に引続く包装機構部分へ送り込むことが可能で、爾後の包装機構の作動に寄与するところが大きいことは勿論搬送上至難な海苔を寸断積層したまま確実に送り得る上で実益効果が多大である。

三  被告の行為

被告は、遅くとも昭和五二年から別紙物件目録一及び二記載の各海苔自動包装機(以下順次「イ号物件」「ロ号物件」という。)を、その後別紙物件目録三記載の海苔自動包装機(以下「ハ号物件」といい、イないしハ号物件を包括指称するときは「被告物件」という。)を、業として製造販売した(製造販売の事実は争いがなく、始期は弁論の全趣旨)。

四  原告は、昭和三九年頃から昭和五九年七月にかけて、本件発明一、二を実施した海苔自動包装機を製造して、国内各地の海苔加工業者に販売しており、これと被告物件は市場において競合した(甲一三、証人東條〔第二回〕)。

五  原告の請求の概要

被告物件は本件発明一、二の技術的範囲に属し、被告は被告物件を少なくとも四六台製造販売して本件特許権一、二を侵害したこと、原告はそれによって少なくとも実施料相当額一六一〇万円の損害を被ったことを理由に、不法行為による損害賠償請求権に基づき損害金の内金一〇〇〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である昭和五九年二月五日から支払済みまで民法所定の遅延損害金の支払を請求。

六  争点

1  本件発明一、二の分割出願が特許法四四条一項所定の要件を欠くか。

(原告の主張)

(一) 本件発明一は、原出願2項発明と同一ないしは実質的に同一であるから、本件特許一は特許法四四条一項に違反して特許されたものである。

本件発明二は、原出願2項発明と同一ないしは実質的に同一であるから、本件特許二は特許法四四条一項に違反して特許されたものである。

実質的に同一の発明について二つの特許権が存続することは許されるべきでなく、ましてや原出願に係る特許権が存続期間満了により消滅した後に同一内容の分割出願に係る発明についての特許権が存続することは、事実上特許権の存続期間の延長であり、それが許されないことは議論の余地がない特許制度の根本問題である。

(二) 本件発明一は原出願に包含された発明でない。

本件発明一には、分割出願に際して、「移送路は放射状でなく、交互に上下に高低差を持たせ、移送路の中間部を切断分離し、この部分を拡散することによって隣接する寸断片の間隔をとるもの」という原出願の明細書及び図面に記載がなく自明でもない特殊構造の移送路が追加され、これについても出願日の遡及を受けており、本件特許一はこの点でも特許法四四条一項に違反して特許されたものである。

(三) 本件発明二は原出願に包含された発明でない。

本件発明二には、「分離案内路5と誘導樋8、9は夫々独立して形成することもできる。例えば水平部7、7としては長方形状をなした平板又は上面が長方形状をなした台を使用し、傾斜部6としては長方形状をなし傾斜又は途中に屈曲部を形成した板又は上面を傾斜面となした台を使用する。」、「誘導樋に交叉する一本の搬送機構上に各海苔片を等間隔をもたせて移し換えることができる」という原出願の明細書及び図面に記載がなく自明でもない事項が実施例として追加されており、これは被告製品を包含する意図で行われたことが明らかであり、本件特許二はこの点でも特許法四四条一項に違反して特許されたものである。

(四) 出願日の非遡及とその効果

以上のとおり、本件発明一は特許法四四条一項に違反して分割出願されたものであるから、同条三項の適用はなく、本件発明一の出願日は、現実に願書を特許庁に提出した昭和四三年六月一五日とされるべきである。そして、昭和四三年五月一七日に原出願が出願公告され、その特許公報には本件発明一の全てが記載されているから、本件発明一は特許法二九条一項三号に該当する発明となり、本件特許一は同項の規定に違反してされたものであって、無効理由を有する。

同様に、本件発明二の出願日は、現実に願書を特許庁に提出した昭和四二年七月一八日とされるべきである。そして、本件発明二は、原出願2項発明と同一構成であり、原出願2項発明に対して後願となるから、本件発明二は特許法三九条の規定により特許を受けることができない発明となり、本件特許二は同条の規定に違反してされたものであって、無効理由を有する。

被告は、本件特許一、二について、無効審判を請求している(昭和六一年審判第一一五八号、同一一六〇号)が、特許に明らかな無効理由があるときには、特許を無効にすべき旨の審決の確定を待つまでもなく、特許発明の技術的範囲は最も狭い意味に解釈されるべきであり、そう解釈したとき被告物件はいずれも本件発明一、二の技術的範囲に属しない。

2  本件発明一、二が特許出願前に日本国内において公然実施をされたか。

(被告の主張)

原告は、昭和三八年頃、谷常海苔株式会社(以下「谷常海苔」という。)と共同で、海苔自動包装機を開発した。その結果、原告は、それぞれの平坦面で互いに摩接する片刃構造の一対の回転刃を持ち、右回転刃の直後に移送路があり、その移送路は交互に高低差を持ち、放射状にガイドに結合されており、前記回転刃により切断された積層海苔片が互いに接触することなく移送される機構の、したがって本件発明一、二の構成要件を全て具備する海苔自動包装機を製造し、昭和三八年五月頃同機の試作機一台を谷常海苔に何ら制限なく公然と無償提供し、昭和三九年五月にも同機一台を谷常海苔に納入した他、谷常海苔以外に対しても昭和三八年から右機械の販売を開始して、昭和三九年七月一七日までに広島、大阪及び九州などの海苔加工業者に対して少なくとも約二〇台販売した。

したがって、本件発明一、二は、特許法二九条一項の規定により特許を受けることができない発明であり、本件特許一、二は無効理由を有する。このように本件発明一、二の構成要件が出願時において全部公知である以上、特許権侵害訴訟においてもその点を参酌して、本件発明一、二の技術的範囲は、願書添付の明細書及び図面に記載された実施例どおりのものに限定されるべきであり、そうすると被告物件と本件発明一、二の実施例との間には相違点があるから、被告物件は本件発明一、二の技術的範囲に属しないというべきである。

3  被告物件が本件発明一、二の技術的範囲に属するか。

4  原告の請求が信義則上許されないといえるか。

5  被告の行為が本件特許権一、二を侵害する場合、原告に賠償すべき損害の額

(一) 原告の主張

被告は昭和五二、三年頃から昭和五八年四月三〇日までの間に、被告物件を少なくとも四六台製造販売した。その具体的内容は、別紙被告物件販売一覧表の原告の主張欄記載のとおりであるが、それに限定はしない。右表の合計は四七ないし四八台になるが、少なくとも四六台製造販売したことは明らかである。被告が主張する原告製造の海苔自動包装機の改造ないしオーバーホール及び改造ないしオーバーホールした物の販売も、本件発明一、二の実施(生産及び譲渡)にあたる。

原告は、右被告行為により同数の海苔自動包装機を製造販売することができず、同期間中の海苔自動包装機の製造販売による粗利益の合計額五〇一四万円(一台当たり平均一〇九万円〔平均販売価格五四五万円の二割〕×四六台)の得べかりし利益を失った。また、被告の右被告行為による利益の額は少なくとも一台当たり平均一〇〇万円(平均販売価格五〇〇万円の二割)であり、被告は、右被告行為により四六〇〇万円(一〇〇万円×四六台)の利益を得た。更に、右被告行為に対する本件発明一、二の実施料相当額は、一台当たり三五万円(平均販売価格五〇〇万円の七パーセント)、合計一六一〇万円(三五万円×四六台)である。したがって、原告は被告に対し少なくとも右実施料相当額一六一〇万円を損害賠償金として請求できる。

(二) 被告の認否及び主張

被告が、別紙被告物件販売一覧表の被告の認否等(認める台数)欄記載のとおり、イ号物件二台、ロ号物件一一台、ハ号物件四台の合計一七台の被告物件を製造販売したことは認め、その余は否認する。否認する物の一部は、同(事情)欄記載のとおり顧客の元にある原告製の海苔自動包装機を改造ないしオーバーホールし、あるいは中古の原告製の海苔自動包装機を改造ないしオーバーホールして販売したものである。

なお、海苔自動包装機は、大別すると、切断移送部分と包装装置部分の二つの部分からなり、本件発明一、二は、いずれも切断移送部分のみに関するものである。しかもハ号物件では、切断寸法に応じた形状のカセット式ユニットに構成された切断移送機構を包装装置へ着脱自在に連結するものであり、切断移送機構はカセットとして単品販売されて包装装置とは別個に取引されることもあり、海苔製造業者は一台の包装装置に複数台の切断移送機構カセットを具え、これを選択して包装装置に連結することも可能であるし、また、海苔包装装置は、本件発明一、二とは別技術の移送機構で海苔を送り込んでも機能するから、両者が不可分の結合関係にあるものでもない。そして、海苔自動包装機の価格中に占める割合は、包装装置部分が圧倒的に大きく、切断移送部分は一〇パーセント程度にすぎないから、損害額の算定にあたってはこの点が考慮されるべきである。

また、被告は、昭和四七年頃より、原告から委託を受けて原告製の海苔自動包装機を数年間で数十台販売し、その後、昭和五五年頃までは、ユーザーからの修理などの要請があった際も原告から部品を取り寄せて行っており、原告も被告に対して修理・改造は被告において行うよう指示し、被告は右指示に基づき既に販売済の原告製品に必要な修理・改造を加えた。したがって、昭和五五年頃までの被告による原告製の海苔自動包装機の改造は、それについて原告の承諾があるから、本件特許権一、二の侵害を構成することはない。

第三  争点に対する判断

一  争点1(分割出願の要件欠如の主張)について

1  本件発明一は原出願2項発明と同一ないしは実質的に同一か

(一) 被告は、原出願2項発明の構成要件の要旨は、Ⅰ「一対の回転刃を並列した点」、Ⅱ「誘導樋を放射状に延長設置した点」、Ⅲ「隣接する誘導樋毎に交互に高低差を付与した点」、Ⅳ「誘導樋の終端を同高位に復元した点」、Ⅴ「移送部材」及びⅥ「海苔の自動連続包装装置における海苔の切断送り機構」の六点であるとしたうえで、原出願2項発明の構成要件Aと本件発明一の構成要件(1)はⅠ「一対の回転刃を並列した点」で、前者の構成要件C及びGと後者の構成要件(4)はV「移送部材」を設けた点で、前者の構成要件Hと後者の構成要件(5)はⅥ「海苔の自動連続包装装置における海苔の切断送り機構」である点で同一であり、前者の構成要件D及びEと後者の構成要件(2)及び(3)はⅢ「隣接する誘導樋毎に交互に高低差を付与した点」で略同一であり、本件発明一がⅡ「誘導樋を放射状に延長設置した点」(前者の構成要件B)を欠くことについては、誘導樋を放射状に延長設置する構成は送り装置における慣用技術であって、米国特許第二七四五五三八号明細書(乙二三)に見られる如く本件特許一の出願日前から広く実施されており、原出願2項発明は、慣用技術である右構成を余分に具えたにすぎないから、その構成の有無により原出願2項発明と本件発明一とが相異することにはならず、また、本件発明一がⅣ「誘導樋の終端を同高位に復元した点」(構成要件F)を欠くことも、本件発明一は、単なる送り機構ではなく海苔の自動連続包装装置に於ける海苔送り機構であるから、誘導樋の終端を同高位に復元した構成を設計上の必然として内在していることは勿論であるので、右構成を有する点でも両発明は実質的に同一であって、結局、本件発明一の構成は全て原出願2項発明の構成と一致し、かつ、原出願2項発明は本件発明一の目的、作用、効果の全てを包含しているから、本件発明一は原出願2項発明と同一ないし実質的に同一である旨主張する。

(二) しかしながら、原出願2項発明及び本件発明一の要旨を右の如く単純化すべき理由は見い出し難く、明細書及び図面の記載(甲一、九、乙七)を斟酌して原出願2項発明と本件発明一を対比すると、次のとおりの共通点及び差異が認められる。

すなわち、前者の構成要件Aと後者の構成要件(1)、前者の構成要件Bのうち「此等各対の回転刃の切断面によって区画される各空間を始端部として延長設置される誘導樋を有すること。」と後者の構成要件(2)、前者の構成要件Cと後者の構成要件(4)、前者の構成要件Dと後者の構成要件(3)は、それぞれ、その表現は異なるものの技術的な意味は同一であると認められるが、他方で、<1>前者は誘導樋の延長設置の態様を「放射状に」なすとの限定を有する(構成要件B)のに対して、後者はこれを有しない点、<2>

前者は「誘導樋は夫々の内法幅員について各切断海苔片の幅より大なる幅員を与えるべく垂直面に於て適宜の重なりを保持させること。」との限定を有する(構成要件E)のに対して、後者はこれを有しない点、<3>前者は「此等高低差を有する誘導樋は少なくとも搬送終端に達する迄の間に同高位に復元させて構成すること。」との限定を有する(構成要件F)のに対して、後者はこれを有しない点、<4>前者は「積層海苔片の移送部材は各放射状をなす誘導樋に沿って移動させるべく設けるとともに移送部材は少なくとも上下に於て回転刃の回転軸間を左右に於ては対をなす切断刃間を通過すべく循環路を設定すること。」との限定を有する(構成要件G)のに対して、後者はこれを有しない点、<5>前者は「海苔の自動連続包装々置に於ける切断送り込み機構」についての発明である(構成要件H)のに対して、後者は「海苔の自動連続包装装置に於ける切断直後の海苔送り機構」についての発明であって(構成要件(5))、前者が「切断送り込み機構」全体を発明の対象としているのに対して、後者は「切断直後の海苔送り機構」のみを発明の対象としている点(このことは、特許請求の範囲の記載の他、発明の詳細な説明〔原公報1頁左欄下から2行目~同右欄9行、公報一2欄25~32行〕を対比すれば明らかである)、に差異が認められる(なお、原出願1項発明と比較すると、<4>の点での差異がない他は、右と同様である。)。

そして、本件発明一が<1>の誘導樋(移送路)の延長設置の態様を放射状になすとの限定を有しない点に関しては、被告主張の米国特許第二七四五五三八号明細書には、収納装置ヘシートを送るコンベアにおいて、上下のコンベアベルトを放射状に延長設置する構成が開示されていることが認められるが(乙二三)、右事実があるからといって、誘導樋(移送路)を放射状に延長設置する構成が本件特許一の出願日前から広く実施された送り装置における慣用技術であるとは到底認められない。

また、<3>の誘導樋(移送路)は少なくとも搬送終端に達する迄の間に同高位に復元させるとの構成を有しない点は、<5>の本件発明一が「切断送り込み機構」全体ではなく「切断直後の海苔送り機構」のみを発明の対象としている点に関係するものである。すなわち、「切断送り込み機構」を「切断-切断直後の移送-それに続く搬送終端までの移送-包装機械への送り込み」の四段階に分けると、本件発明一はそのうちの「切断-切断直後の移送」部分のみを発明の対象としており、その後の段階においてどのような構成をとるかはそもそも発明の対象外のことであるから、被告主張の如く、本件発明一が誘導樋(移送路)の終端を同高位に復元する構成を内在していると考えることはできない。本件発明一を実施するにあたり、原出願2項発明の如く、誘導樋(移送路)を放射状に延長設置したうえで、その終端を同高位に復元すれば、海苔の自動連続包装に益するところが多いことは明らかである(甲一、九)が、それは本件発明一の発明の対象外のことである。

原出願2項発明は、右構成の相違、特に、誘導樋の延長設置の態様を放射状とし、誘導樋を搬送終端に達するまでの間に同高位に復元させる構成要件を有することにより、本件発明一が有する効果の他に、同時に切断された各組の積層海苔片を斉一したままの状態で同時に次の包装機構部分へ移送できるという特有の効果を合わせ持っているから、両者の効果も相違する。

したがって、本件発明一が原出願2項発明と同一ないし実質的に同一であると認めることはできない。

もっとも、右対比から明らかな如く、原出願2項発明が対象とする海苔の自動連続包装装置における切断送り込み機構は、本件発明一が対象とする海苔の自動連続包装装置における切断直後の海苔送り機構をその内部に含み、かつその部分の構成に関しては実質的に同一の構成要件の他に更に限定を加える構成要件を有するものであって、原出願2項発明は、本件発明一の技術思想を用い、これに更に限定要素を付した関係にあり、原出願2項発明を実施した海苔の自動連続包装装置における切断送り込み機構は、原出願2項発明の技術的範囲に属するとともに、そのうちの切断直後の海苔送り機構が本件発明一の技術的範囲にも属することになるから、両発明はその範囲で部分的に重複する関係にあり、換言すれば、原出願2項発明は本件発明一を利用する関係にあるとみる余地はあるが、本件発明一が原出願2項発明との関係において特許法四四条一項に規定する「二以上の発明を包含する特許出願の一部」に該当しないとはいえない。

2  本件発明二は原出願2項発明と同一ないしは実質的に同一か

(一) 被告は、原出願2項発明の構成要件Aと本件発明二の構成要件(1)は前記Ⅰ「一対の回転刃を並列した点」で、前者の構成要件Bと後者の構成要件(5)はⅡ「誘導樋を放射状に延長設置した点」で、前者の構成要件C及びGと後者の構成要件(4)はⅤ「移送部材」を設けた点で、前者の構成要件Hと後者の構成要件(6)はⅥ「海苔の自動連続包装装置における海苔の切断送り機構」である点で、それぞれ同じであり、前者の構成要件D及びEと後者の構成要件(2)及び(3)は、Ⅲ「隣接する誘導樋毎に交互に高低差を付与した点」で略同一であり(前者の構成要件Eは、樋の内幅を切断海苔片の幅よりも大きくするために隣接樋を上下方向に適宜の重なりを持たしたものであり、後者においても、海苔片の分離案内路が海苔片と同一幅であれば海苔片の側辺が樋内面に引っ掛かって搬送が困難となるから、当然ある程度の余裕は設けねばならず、分離案内路の幅が海苔片より広ければ隣合う分離案内路と重なり合うことは当然の構造である。)、本件発明二がⅣ「誘導樋の終端を同高位に復元した点」(構成要件F)を欠くことについては、海苔の連続包装装置の入口へ海苔を送り込むため誘導樋の終端部は包装装置の入口高さに合わさねばならず、包装装置の入口は横長に開口して複数の海苔切断片を受け入れる様になっている故、誘導樋を少なくとも搬送終端に達するまでの間に同高位に復元することは、包装機の受入口に接続するための必然の構造であり、誘導樋の終端が同高位に復元していなければ、誘導樋を包装機の受入口に接続できず、実施不能となってしまうから、原出願2項発明の構成要件Fは必然的な事項を記載したにすぎず、無意味な限定であり、本件発明二がこれに対応する記載を欠いても、当然に具えている自明の構成であるから、本件発明二は原出願2項発明と実質同一である旨主張する。

(二) しかしながら、明細書の図面の簡単な説明及び図面の記載(甲二、九、乙七)を斟酌して原出願2項発明と本件発明二を対比すると、次のとおり共通点及び差異が認められる。

すなわち、前者の構成要件Aと後者の構成要件(1)、前者の構成要件Cと後者の構成要件(4)は、それぞれ、その表現は異なるものの技術的な意味は同一であり、前者の構成要件B及びDと後者の構成要件(2)、(3)及び(5)も、前者で「誘導樋」と表示している移送路のうち、Dの「互に隣接する樋ごとに交互に高低差を附与して配置する」「切断直後の行程部分」を後者では「分離案内路」と表示し、それに続く部分を後者では「誘導樋」と区別して表示しているものであり、表現は異なるものの技術的な意味は同一であると認められるが、他方で、<1>前者は「誘導樋は夫々の内法幅員について各切断海苔片の幅より大なる幅員を与えるべく垂直面に於て適宜の重なりを保持させること。」との限定を有する(構成要件E)のに対して、後者はこれを有しない点、<2>前者は「此等高低差を有する誘導樋は少なくとも搬送終端に達する迄の間に同高位に復元させて構成すること。」との限定を有する(構成要件F)のに対して、後者はこれを有しない点、<3>

前者は「積層海苔片の移送部材は各放射状をなす誘導樋に沿って移動させるべく設けるとともに移送部材は少なくとも上下に於て回転刃の回転軸間を左右に於ては対をなす切断刃間を通過すべく循環路を設定すること。」との限定を有する(構成要件G)のに対して、後者はこれを有しない点、<4> 前者は「海苔の自動連続包装々置に於ける切断送り込み機構」についての発明である(構成要件H)のに対して、後者は「海苔の自動連続包装装置に於ける切断移送機構」についての発明であって(構成要件(6))、前者は「切断送り込み機構」全体を発明の対象としているのに対して、後者は「切断送り込み機構」全体ではなく、切断、移送、包装機への送り込みの過程のうち、最後の送り込み部分を除く、「切断移送機構」のみを発明の対象としている点、に差異が認められる(なお、原出願1項発明と比較すると、<3>の点での差異がない他は右と同様である。)。

右のうち、<2>の誘導樋は少なくとも搬送終端に達する迄の間に同高位に復元させるとの構成を有しない点は、<4>の本件発明二が「切断送り込み機構」全体ではなく「切断移送機構」のみを発明の対象としていることに関係するものである。すなわち、その後の包装機への送り込み部分においてどのような構成をとるかはそもそも発明の対象外のことであるから、本件発明二が誘導樋の終端を同高位に復元する構成を内在していると考えることはできない。本件発明二を実施するにあたり、原出願2項発明の如く、誘導樋の終端を同高位に復元すれば、海苔の自動連続包装に益するところが多いことは明らかである(甲二、九)が、それは本件発明二の発明の対象外のことであり、本件発明二がそのような技術思想を内在しているとまではいえない。本件発明二の明細書の発明の詳細な説明中では、誘導樋の終端を同高位に復元することやその場合の効果について説明している(公報3欄1、2行、4欄17~21行)が、これは、本件発明二の対象部分に引き続く部分においてそのような構成をとることができることを説明し、その場合の効果を説明したものと認められ、本件発明二の構成では、例えば、誘導樋の終端の高さを相違するままとしておいて、移送した積層海苔片を高低の誘導樋毎に包装機構部分へ送り込むことも考えうるから、右記載があるからといって、本件発明二が「誘導樋の終端を同高位に復元する」構成を不可欠なものとして内在しているとまではいえない。

原出願2項発明は、右構成の相違、特に、誘導樋を同高位に復元させる構成要件を持つことのゆえに、本件発明二が有する効果の他に、同時に切断された各組の積層海苔片を斉一したままの状態で同時に次の包装機構部分へ送り込むこと、すなわち、例えば六列に切断して移送した場合には六列に横に並んだ状態のまま同時に包装装置へ送り込むことができるという特有の効果(本件発明二においては、右のとおり、本件発明二の対象部分に引き続く部分において誘導樋を同高位に復元する構成をとった場合に初めて同様の効果を奏するにすぎない)を合わせ持っているから、両者の効果も相違する。

したがって、本件発明二が原出願2項発明と同一ないし実質的に同一であると認めることはできない。

もっとも、右対比から明らかな如く、原出願2項発明が対象とする海苔の自動連続包装装置における切断送り込み機構は、本件発明二が対象とする海苔の自動連続包装装置における切断移送機構をその内部に含み、かつその部分の構成に関しては実質的に同一の構成要件の他に更に限定を加える構成要件を有するものであって、原出願2項発明は、本件発明二の技術思想を用い、これに更に限定要素を付した関係にあり、原出願2項発明を実施した海苔の自動連続包装装置における切断送り込み機構は、原出願2項発明の技術的範囲に属するとともに、そのうちの切断移送機構が本件発明二の技術的範囲にも属することになるから、両発明はその範囲で部分的に重複する関係にあり、換言すれば、原出願2項発明は本件発明二を利用する関係にあるとみる余地はあるが、本件発明二が原出願2項発明との関係において特許法四四条一項に規定する「二以上の発明を包含する特許出願の一部」に該当しないとはいえない。

3  本件発明一は原出願に包含された発明でないといえるか。

(一) 本件発明一の願書添付の明細書の発明の詳細な説明中には、「移送路は……放射状でなくても、交互に上下に高低差を持たせた移送路の中間部を切断分離し、この部分を拡散することによって隣接する寸断片の間隔をとることもできる。」(公報一3欄23~29行)という記載があり、これは原出願の明細書にはなかった記載であることは被告主張のとおりである(甲一、九)。

被告は、右追加記載が本件発明一の出願に際して加えられた新規事項であり、右事項は、昭和四一年八月二三日(原出願の後で本件発明一の出願の前)に特許出願(特願昭四一-五五三三八号)された発明に正に該当し、右記載を加えた結果、同発明に対して排他権を及ぼすという不合理を生じることとなり、そのように、新規事項についてまで出願日を原出願の日に遡及させて排他権を発生させるということは不合理であり、到底許されることではなく、本件特許一には無効理由がある旨主張する。

(二) しかしながら、右追加事項は特許請求の範囲に記載されたわけではなく、発明の詳細な説明中に記載されたものにすぎないうえ、右の移送路の中間部分の構成はそもそも本件発明が対象とする「切断直後の海苔送り機構」の範囲外のことであり、また、「移送路の中間部を切断分離し、この部分を拡散する」との趣旨は明確でないものの、右追加事項の存在により本件発明一の効果を阻害したり、別異な効果が奏するとも認められず、この追加事項は原出願の明細書及び図面に開示された本件発明一の技術的事項を変更しない範囲内で追加されたものと解されるので、本件発明一が原出願に包含された発明でないとはいえない。

なお、被告指摘の特願昭四一-五五三三八号特許出願に係る発明は、切断カッターの前方(同発明においては下流方向を前方と表現している。)に、切断カッターにより分割された海苔を内部に収容できるよう前後面を開口したボックス状の海苔受容器を段違いにしかも横列に配列し、これを、前方(下流方向)へ回動するようにして内部の海苔を包装機構へ送り込むようにしたものである(乙八)から、「移送路」を設け、「移送路に沿って移動する移動部材を以って切断海苔片を移送路上を移送すべくなした」本件発明一とは、技術的構成を異にすることが明らかであるから、右追加事項の存在により右発明が本件発明一の技術的範囲に属することになると考えることもできない。

4  本件発明二は原出願に包含された発明でないといえるか。

(一) 本件発明二の願書添付の明細書の発明の詳細な説明中には、「分離案内路5と誘導樋8、9は……夫々独立して形成することもできる。例えば水平部7、7……としては長方形状をなした平板又は上面が長方形状をなした台を使用し、傾斜部6としては長方形状をなし傾斜又は途中に屈曲部を形成した板又は上面を傾斜面となした台を使用する。」(公報二3欄20~27行)、「誘導樋に交叉する一本の搬送機構上に各海苔片を等間隔をもたせて移し換えることができる」(同4欄19、20行)という記載があり、これは原出願の明細書にはなかった記載であることは被告主張のとおりである(甲二、九)。

被告は、これらは原出願の明細書及び図面には記載されていなかった事項であり、しかも自明事項でもなく、新規な事項であり、これら新規事項についても原出願の出願日の援用を受けたもので、本件特許二には無効理由がある旨主張する。

(二) しかしながら、原出願の明細書では、実施例としては「誘導樋」を一体に形成したものが示されているのみであるが、それに限定する趣旨の記載はなく、また、切断直後の行程部分とそれ以降の部分を別体とするか一体とするかの差異により別異の効果を奏することも窺えないから、当業者であれば、原出願の明細書の記載から、「誘導樋」の設計に際して、切断直後の行程部分とそれ以降の部分で別体に構成しうることも容易に認識できると認められ、また切断直後の行程部分の水平部及び傾斜部の材料や形状には右の記載の如き各種のものがありうることも容易に認識できると認められる。また、「誘導樋に交叉する一本の搬送機構上に各海苔片を等間隔をもたせて移し換えることができる」ことは、原出願の明細書の「終端域では同時に切断された各組の積層海苔片を斉一したままの状態で同時に引続く包装機構部分へ送り込むことが可能で」との記載(原公報2頁左欄30~32行)及び原出願の図面第2図(同3頁)から容易に読み取ることができる。

したがって、右追加事項は原出願の明細書及び図面に開示された本件発明二の技術的事項を変更しない範囲内で追加されたものと解されるので、本件発明二が原出願に包含された発明でないとはいえない。

5  以上のとおり、本件発明一、二の分割出願が特許法四四条一項所定の要件を欠くとは認められないから、本件発明一及び二の技術的範囲を限定して解すべきであるとする被告の主張は理由がないといわざるをえない。

二  争点2(公然実施)について

1  証拠(甲七、八、一〇、乙三、九の1~3、一〇~一五、二九~三八、検乙一、二、証人稲田、東條〔第一回〕、藤井、溝田)を総合すると、次の事実が認められる。

原告は、昭和三七年末頃から、谷常海苔と共同で、海苔自動包装機の開発を始め、昭和三八年五月頃同機の試作機一台を谷常海苔に納入し、昭和三九年五月にも海苔自動包装機一台を谷常海苔に納入した。

原告が谷常海苔に納入した試作機については、食品業界の業界紙である「食品新聞」の昭和三八年六月二四日号(乙三一)で、原告と株式会社谷常商店(谷常海苔の当時の商号か、同社の関連会社と考えられる。)が海苔自動包装機「TWS-一九六三型海苔包装機」を試作し、目下谷常商店で試運転を行っており、なお改良を加えて近く本格的な製作に着手する予定だが、既に受注もかなりあり、同機の特長は、まずAテーブルで五枚重ねの海苔を二つ切りにし続いてBテーブル上で一〇切りに切断しこれがそれぞれ異なったベルトで運ばれ、上下から同方向に進む防湿セロファンに挟まれると同時に、四方をシールし、最後にタテ、ヨコを切断するもので、同時に五袋が包装される旨の記事が掲載された。

原告と谷常商店はその後間もなく海苔自動包装機の販売を開始して、食品新聞昭和三八年七月三日号及び同月一〇日号(乙一〇、一一、三二、三三)に、谷常商店を発売元、原告を製造元として「味附海苔完全自動包装機」と題する商品広告を掲載した。同公告には、「毎時1万2千袋の最高性能機出現」、「本機はAテーブル上で回転刃物により5枚重ねの海苔を2つ切りとし、続いてBテーブル上で所要の10切断とし、これを特殊フィード装置により#300厚の防湿セロファンに移動し転動熱ロールにより美麗なる模様の四方シールをして後にフライング刃物により切断し広巾ゴムベルトコンベアにより所要の個所に移動されます。作業は女子2名にて行ない非常に格安経済的で原価節減に役立つと思います。」等の宣伝文句や機械の外観写真等が掲載された。但し、海苔の切断機構や切断後の移送機構については、それ以上に具体的な説明はなく、写真からもその構造、特に隣接する誘導樋(移送路、分離案内路)毎に交互に高低差を付与した構造を有するか否か、誘導樋が放射状に延長設置されているか否かは不明である。

原告は、谷常海苔ないし谷常商店を介して、昭和三八年一〇月頃、宝海苔株式会社に対し海苔自動包装機二台を販売、納入し、昭和三九年前半に、株式会社三河屋に海苔自動包装機を販売、納入した。

原告は、その後、食品新聞昭和三九年五月一一日号(乙一二、一三)に、「海苔加工の合理化に トーワの海苔自動包装機」との広告文句や海苔自動包装機の写真等からなる広告を掲載し、同日号には、「企業という企業は大小を問わず、あらゆる企業が人件費の節約と増産によるコスト・ダウンを目ざして生産設備のオートメ化に懸命だ。加工海苔業界でも加工設備の近代化が早くから望まれていたが、これに応えて広島の某製機がつくりだしたのが、この味付海苔自動包装機だ。切断から包装までを毎時250袋包む能力をもっている新鋭機だ…」という記事とともに、原告製の海苔自動包装機の写真が掲載された。更に、食品新聞昭和三九年六月二二日号(乙一四、二九)には、加工海苔業界を展望する記事中で「自動包装を中心とした機械化も着々進み、前記の宝をはじめとして三河屋、白子など、また計画中のところとして東海屋など四、五社がのぼっている。」との記載があるほか、「近代化が進む加工海苔工場」との説明付きで原告製の海苔自動包装機の写真が掲載され、同日号に掲載の株式会社三河屋の広告にも、「自動包装機による防湿完全包装袋入」「製品に手をふれないで全工程紫外線殺菌下に包装」「完全乾燥後自動包装に依る防湿袋入するため一般製品と格段の防湿効果がある」「完全乾燥包装のため乾燥剤などに依る味の変化が無い」などの説明とともに原告製の海苔自動包装機の写真が掲載された。更に、食品新聞昭和三九年一一月四日号(乙一五)には、「今年に入り急激に自動包装化が進んでいる加工海苔業界だが、このほど(株)東海屋と(株)七福屋に新鋭機が入り、既に稼働の準備に入っている。……関西地方の加工筋には、自動包装ブームが到来しているが、注目されていた二社もついに合理化ともからみ合わせて採用したもの。いずれも一束ごとに包装できるもので、現在は試運転の段階だが……」との記事とともに、原告製の海苔自動包装機の写真が掲載された。しかしながら、右広告、記事のいずれも、海苔の切断機構や切断後の移送機構についての具体的な説明はなく、写真からもその構造、特に隣接する誘導樋毎に交互に高低差を付与した構造を有するか否か、誘導樋が放射状に延長設置されているか否かは不明である(但し、食品新聞昭和三九年六月二二日号の記事中に掲載の写真〔乙一四〕からは、ガイドの切断刃手前の部分が放射状に延びていることが窺われ、切断刃の後ろ部分もそのまま放射状に延長設置されていると推認される。)。

その後、原告は、食品新聞昭和四〇年一月五日号(乙三五)、同年二月一九日号(乙三六)及び同月二六日号(乙三七)に海苔自動包装機(T・W・S65型)の広告を掲載し、後二者には、「大好評11ケ月50余台納入」との宣伝文句が記載されている。

2  証人稲田は、同人が原告に入社した昭和三九年二月当時、原告は既に海苔自動包装機を製造販売しており、その機械は、積層海苔を裁断するための上下に対になった片刃構造の丸刃を並列し、裁断された海苔片をチェーンに付けた送り爪によって扇状の放射ガイドに沿って送る機構を備えており、かつ放射ガイドは上に向いて上がるものと真っ直ぐに進むものを交互に設けて高低差が付与され、上下のガイドには重なり合う部分があり、裁断の際に上下の刃の組合せにより海苔を直進させるものと上方に上げるものに交互に分ける構造を有していた旨供述し、証人溝田も宝海苔が新工場を建設する際に購入した海苔自動包装機のガイド部分は交互に高低差を持ち、放射状に設置されていた旨供述する。

他方、昭和三七年九月に原告に入社し、設計係長として海苔自動包装機の開発を担当した証人藤井は、昭和三七年一二月頃から、別紙「1号機送り装置図」記載の如く、半分に裁断した積層海苔を下側送り爪で押してカッターで切断し、各積層海苔片をそのまま下側送り爪で押して平行に設けた仕切板内部を移送して、ボックス部分に入れた後、カムの回転によって海苔ボックス広げレバーが各ボックスを左右に広げ、更に各積層海苔片を上側送り爪で押して包装機に送り込む構造を有する一号機を製造し、これを昭和三八年四、五月頃に谷常海苔に納入したが、カッターで切断した後に仕切板で広げる所とボックスの中に入れて左右に広げる所が作動不良で、昭和三八年夏頃から検討を重ねて、同年暮れ頃に、「2号機送り装置図」記載の如く、カッターの直後に上下に設けた丸ベルトで積層海苔片を押えて乱れずに仕切板を通過するようにするとともに、送り爪及び仕切板を放射状に延長設置して隣接する積層海苔片の間隔を徐々に広げつつ移送する構造に改良した二号機を製造し、これを昭和三九年春頃販売したが、べたつく海苔の場合にはベルトがうまく回らなくなる等のトラブルが生じやすかったために更に改良を加え、昭和三九年六月頃に、誘導樋の切断直後の行程部分に高低差を設け、原出願の明細書及び図面に記載の実施例の構造を有する切断送り込み機構を有する海苔自動包装機(完成機)の開発に成功し、同年七月に原出願の出願をした後にその販売を始めた旨、食品新聞のうち、昭和三八年七月三日号及び同月一〇日号(乙一〇、一一、三二、三三)に掲載の写真は、装置の左側に電気ボックスが一体に取りつけてある構造からみて一号機の写真であり、昭和三九年五月一一日号、同年六月二二日号及び同年一一月四日号(乙一二~一五、二九)に掲載の写真は、装置の右側に電気ボックスが一体に取りつけてある構造及び丸みを帯びた台形型のフードの形からみて二号機の写真であり、完成機は別置き型のデスクタイプの電気ボックスであり、標準は右側手前に置くようになっており、フードも台形でなく四角形である旨供述する。

3  右各供述を検討すると、ガイド部分の構造に関する証人稲田及び溝田の各供述を裏付ける客観的な証拠は何ら存在しないうえ、証人稲田は谷常海苔に納入された海苔自動包装機の誘導樋がどのようになっていたかはっきりとはわからない、昭和三九年二月に入社した当時は、納入済の海苔自動包装機に故障があるなどして、原告の工場で改造を加えていた旨供述し、証人溝田も昭和三八年一〇月に海苔自動包装機を導入した当初の機械は管理面に問題があったために半年以内位で機械そのものを入れ換えた旨供述していること、前記食品新聞昭和四〇年一月五日号、同年二月一九日号及び同月二六日号(乙三五~三七)に掲載の写真の海苔自動包装機は証人藤井の完成機の外観に関する供述に符合した形をしていることに照らすと、結局、証人稲田及び溝田の供述は採用し難い。したがって、原告が、特許法四四条三項の規定により本件発明一、二の出願時とみなされる原出願の時より前に、誘導樋(本件発明一では移送路、本件発明二では分離案内路及び誘導樋)に高低差を付与した切断移送機構を具えた海苔自動包装機を販売したと認めることはできないから、被告の出願前公然実施の主張も理由がない。

なお、被告は、証人藤井の供述を前提としても、昭和三九年春頃にはガイド部分が放射状の構造の海苔自動包装機が販売されていたことが明らかであるから(乙一四、証人藤井)、少なくとも本件発明二は出願時に公知であった旨主張するが、被告指摘の海苔自動包装機は右のとおりその誘導樋に高低差が付与されていたとは認められない以上、本件発明二の構成要件(2)及び(3)を具備するとはいえないから、被告指摘の右事実から本件発明二が出願時に公知であったということはできない。

三  争点3(技術的範囲への属否)

1  被告物件の構成

(一) イ号物件及びロ号物件

イ号物件及びロ号物件のうち切断直後の海苔送り機構は次のaないしeの構成を有し、切断移送機構は次のfないしkの構成を有すると認められる(別紙物件目録一及び二)。

a 夫々の平坦面で互いに摩接するようにした片刃構造からなる一対の回転刃を有する。

b 前記回転刃の直後に占位する移送路を前記回転刃によって区画される区分毎に設ける。

c 前記移送路の始端は、始端部から上方に指向するものと、始端部からほぼ水平に延びるものとを交互に配設して隣接する移送路が同一平面を構成せざるべくなして、互いに隣接する移送路毎に交互に高低差を付与する。

d 該移送路に沿って移動する移動部材をもって切断海苔片を移送路上を移送すべくなす。

e 海苔の自動連続包装装置における切断直後の海苔送り機構。

f 積層海苔片の移動域に対して上側と下側に対向させて並設した一対の回転軸と、片刃構造からなりその平坦面を少なくとも上記移動域で摩接させて対を構成しこの複数対を前記回転軸に間隔的に配設した切断刃を有する。

g 交互に始端部から上方に向かって傾斜するものと始端部からほぼ水平に延びるものとを配設して前記切断刃により切断された積層海苔の相隣れる寸断片に高低差を附与し各寸断片を分離する、前記切断刃の直後に位置する分離案内路を有する。

h 上記分離案内路に高低差を附与した始端部を対応させてなる誘導樋を有する。

i 前記切断刃、分離案内路、誘導樋に沿って積層海苔片を移送する為の部材を有する。

j 上記誘導樋を放射状に延長設置させている。

k 海苔の自動連続包装装置に於ける切断移送機構。

(二) ハ号物件のうち切断直後の海苔送り機構は次のa、b2、c2、d及びeの構成を有し、切断移送機構は次のf、g2、h2、i、j及びkの構成を有すると認められる(別紙物件目録三、b2「断面矩形の突起」の点は乙一七)。

a 夫々の平坦面で互いに摩接するようにした片刃構造からなる一対の回転刃を有する。

b2 前記回転刃の直前から後方に延伸するが、区画作用は回転刃の直後から生じる一対の断面矩形の突起及びそれに接続して一対のL型断面のレールを対向配置してなる移送路を前記回転刃によって区画される区分毎に設ける。

c2 前記移送路は、前記回転刃の直前直後を通じてほぼ水平に延びるものと、その直後から上方指向の作用を生じるものとを交互に配設して隣接する移送路が同一平面を構成せざるべくなして、互いに隣接する移送路毎に交互に高低差を付与する。

d 該移送路に沿って移動する移動部材をもって切断海苔片を移送路上を移送すべくなす。

e 海苔の自動連続包装装置における切断直後の海苔送り機構。

f 積層海苔片の移動域に対して上側と下側に対向させて並設した一対の回転軸と、片刃構造からなりその平坦面を少なくとも上記移動域で摩接させて対を構成しこの複数対を前記回転軸に間隔的に配設した切断刃を有する。

g2 交互に回転刃の直前直後を通じてほぼ水平に延びるものと、その直後から案内作用を生じる上方に向かって傾斜するものとを配設して前記切断刃により切断された積層海苔の相隣れる寸断片に高低差を附与し各寸断片を分離する、一対の角状の突起からなる分離案内路を有する。

h2 上記分離案内路に高低差を附与した始端部を対応させてなる、一対のL型断面のレールを対向配置して構成した誘導樋を有する。

i 前記切断刃、分離案内路、誘導樋に沿って積層海苔片を移送する為の部材を有する。

j 上記誘導樋を放射状に延長設置させた。

k 海苔の自動連続包装装置に於ける切断移送機構。

2  被告物件が本件発明一の技術的範囲に属するか。

ハ号物件の海苔の自動連続包装装置における切断直後の海苔送り機構の構成と本件発明一の構成要件を対比すると、ハ号物件の構成aは本件発明一の構成要件(1)を、構成b2は構成要件(2)を、構成c2は構成要件(3)を、構成dは構成要件(4)を、構成eは構成要件(5)をそれぞれ充足する。同様に、イ号物件及びロ号物件の海苔の自動連続包装装置における切断直後の海苔送り機構も、本件発明一の構成要件を全て充足する。

そして、被告物件の切断直後の海苔送り機構は、右構成を取ることにより、本件発明一と同様の作用効果を奏すると認められる。

したがって、被告物件の切断直後の海苔送り機構は、本件発明一の技術的範囲に属する。

なお、被告は、本件発明一の構成要件(2)の「移送路」について、原出願の「誘導樋」に代わり「移送路」という語が用いられているが、原出願の発明と本件発明一の各願書添付図面を比較するとほぼ同一の図面となっているから、「移送路」と称しても、構造の内容は原出願の「誘導樋」と何ら異ならないものと考えられ、「誘導樋」という用語、とりわけ「樋」という用語の自然な解釈では、壁面と底を有するものと考えられるので、「移送路」もこのような構造をもつものと考えるべきであるのに対して、被告物件においては、回転刃の直前から角状の一定の長さをもつレールである突起を併行きせて各レールに高低差をもたせ、海苔はそのレールの上を走行し、切断刃により切断されたのち放射状に移送されていくというものであり、この海苔を送り出す部分は、二本のレールとなっており、壁面と底を有する「樋」状の通路ではない点で相違する旨主張する。しかしながら、原出願の特許請求の範囲においては、1項2項とも、「誘導樋」の語が用いられているが、原出願の明細書及び図面の記載からは、誘導樋は切断された積層海苔片を移送部材によって包装機構へ移送するための通路であり、必ずしも全体を底と左右の壁を一体的なものとした樋状とせずとも、移送される積層海苔片が隣接の誘導路(移送路)へ進入できないように作用する仕切り部材と底部材を組合わせてこれを円滑に移送できる誘導路(移送路)を構成すれば足りることも記載されていると認められるから、本件発明一の「移送路」の形状は樋状に限定されるとはいえず、底部を一対の断面矩形のレールからなる突起とし、仕切り部は回転刃(水平移送路の場合)ないし回転刃とこれに続く水平移送路用L型断面レールの立ち上がり壁(上昇移送路の場合)とした構造も、本件発明一の「移送路」にあたるというべきである。なお、右突起は、回転刃の前方から存在しているけれども、右突起が回転刃により切断された積層海苔片を移送する部材として機能するのは回転刃の直後以降であって、その部分が「回転刃の直後に占位する移送路」にあたるのであり、それより前方の部分は右移送路に積層海苔を円滑に送り込むための補助手段であると認められるから、右突起の始端が回転刃の直前にあることが右判断に影響を及ぼすことはない。

被告は、また、被告物件の構成c及びc2と本件発明一の構成要件(3)に関して、本件発明一では、各列は交互に切断直前と直後とで同じ高さのものと、切断直後の高さが切断直前の高さよりも低くなるものとを設けているのであるが、被告物件においては、一列置きに切断直後の高さを切断直前の高さよりも高くするという構成であり、両者は構成を異にする旨主張するが、本件発明一は、特許請求の範囲においては高低差付与の態様につき右の如き限定をしてはおらず、単に実施例として右の如き例を記載しているにすぎないうえ、右相違は技術思想を異にするとも認められないから、右被告主張も採用できない。

被告は、更に、被告物件の海苔送り込み機構は、積層海苔片の走行する方向に沿って棒状の押さえを上側に設けて積層海苔片の厚みを一定範囲以下に保っており、積層海苔片をセロファン等で包装する機構を機械化し、包装機械の入口へ円滑に積層海苔片を送り込むためには積層海苔片を一定の厚みに揃える必要があり、この厚みを揃える機構は、本件発明一にはみられない、被告物件の海苔送り込み機構に特有のものであるから、被告物件は本件発明一の技術的範囲に属しない旨主張するが、右構成は、本件発明一の構成要件を充足する構成を全て具えたうえで付加された構成にすぎず、かつその付加により本件発明一の発明の課題の解決及び作用効果の達成を損なうものでもないから、右構成を有するからといって本件発明一の技術的範囲に属しないということはできない。

3  被告物件が本件発明二の技術的範囲に属するか。

ハ号物件の海苔の自動連続包装装置における切断移送機構の構成と本件発明二の構成要件を対比すると、ハ号物件の構成fは本件発明二の構成要件(1)を、構成g2は構成要件(2)を、構成h2は構成要件(3)を、構成iは構成要件(4)を、構成jは構成要件(5)を、構成kは構成要件(6)をそれぞれ充足する。同様に、イ号物件及びロ号物件の海苔の自動連続包装装置における切断移送機構も、本件発明二の構成要件を全て充足する。

そして、被告物件の海苔の自動連続包装装置における切断移送機構は、右構成を取ることにより、本件発明二と同様の作用効果を奏すると認められる。

したがって、被告物件の海苔の自動連続包装装置における切断移送機構は、本件発明二の技術的範囲に属する。

なお、被告は、本件発明二の構成要件(2)にいう「分離案内路」の構造、高低差付与の方向及び被告物件の厚みを揃える機構について、本件発明一についてと同旨の主張をするが、その点に関する判断は右と同様である。

四  争点4(信義則違反)について

被告は、被告は昭和四五年頃から被告物件を製造販売しており、原告はその頃からその事実を承知していたにもかかわらず被告に対して一度も警告を発することなく本訴提起時まで経過したものであり、このような長期間に渡り何らの権利主張を行わなかったことにより、原告の被告に対する請求権は喪失したものと考えるのが相当であり、原告の請求は信義則上許されない旨主張するが、仮に事実関係が被告主張のとおりであるとしても、原告の被告に対する請求権が喪失したとも、原告の請求が信義則上許されないとも認められない。なお、本件事件は、当庁昭和六〇年(ワ)第八八九四号損害賠償請求事件(本件事件の被告が原告、本件事件の原告が被告であり、出頭した訴訟代理人も本件事件と共通である。以下「別件事件」という。)が提起された後は、これと同一期日に審理されていたところ、別件事件において被告(本件事件の原告)が特許権侵害の不法行為による損害賠償請求権及び不当利得返還請求権について消滅時効を援用した(当裁判所に顕著)のに、本件事件において被告は右主張をするのみで明示的に消滅時効を援用しない事実に照らすと、仮に本件事件で不法行為による損害賠償請求権について消滅時効を援用しても、別件事件における自らの請求と同様に不当利得返還請求をなされ、結局不当利得として実施料相当額の返還債務を負担することは免れず、結果において差異がないと考えて、消滅時効の援用はしなかったものと思料されるから、右主張が消滅時効を援用する趣旨の主張であると解することもできない。

五  争点5(賠償すべき損害の額)について

1  被告物件の製造、販売数量

被告が、昭和五二年から昭和五八年四月三〇日までの間に、イ号物件二台、ロ号物件一一台、ハ号物件四台の合計一七台の被告物件を製造販売したことは争いがなく、証拠(乙三九、証人中村)及び弁論の全趣旨によれば、他に、別紙被告物件販売一覧表2及び7のうち各一台ずつ並びに11の一台の被告物件(イ、ロ、ハ号の別は不明)を製造販売したことが認められるが、それ以外に製造販売したことを認めるに足りる証拠はない。

なお、原告会社作成の「鈴木鉄工所海苔包装機の販売使用台数」と題する書面(甲一一)には、概ね別紙被告物件販売一覧表の原告の主張欄記載のとおり被告物件が販売されたことが確認ないし推定される旨の記載があり、証人東條(第二回)は、右一覧表記載の物件の一部は原告の営業担当者の調査の結果被告が製造販売したことを確認しており、その余も、海苔加工業者は当然に海苔自動包装機を使用しているはずであり、原告及び被告以外は当時海苔自動包装機を製造していなかったから原告が販売した顧客以外は被告製造のものを使用していると推定しうる旨供述し、同証人作成の陳述書(甲一三)にも同旨の記載があるが、右確認の具体的内容は不明であり、右推定についても、原告は昭和四三年から四八年にかけて被告を販売代理店として五八台の海苔自動包装機を販売しているところ、納入先を把握しているのは僅か八台分にすぎないこと(甲一七、東條〔第二回〕)、更に、海苔加工業界においては、海苔自動包装機の中古品も流通していること(証人中村、弁論の全趣旨)、原告及び被告以外に海苔自動包装機を製造販売していた会社もあること(証人中村)に照らすと、原告が把握している販売先以外にも、被告が販売代理店として原告製品を販売した業者や、他の海苔加工業者や被告から原告製造の中古品を購入した業者、更には原告及び被告以外が製造した海苔自動包装機を購入した業者が多数存すると推認されるから、原告が把握している販売先でないからといって被告が被告物件を販売したと推定する合理性はない。

2  原告製品のオーバーホールないし改造及びオーバーホールないし改造した原告製品の販売について

特許権者ないし実施権者が製造販売した特許発明の技術的範囲に属する物件を、修理ないし改造することが、発明の実施(生産)に該当するか否かは、それが発明の対象である物の生産と実質的に同視することができるか否かにより決すべきであると解されるが、被告物件販売一覧表の1、2、4及び8のうち各一台については、回転刃や移送路(レール)やチェーンの配置変更をする改造を行っており(1、4及び8は争いがなく、2は、乙三九及び証人中村)、その際に塗装やレール磨き、他の部品の交換も行ったと認められ(乙三九、証人中村、弁論の全趣旨)、その他にも、客先にある原告製の海苔自動包装機をオーバーホールした事例が六台あり(同表3の一台は争いがなく、7のうち一台、27、37の各一台及び39のうち一台は乙三九及び証人中村、山伝海苔に存する一台〔表中にはない〕は、検甲三の1~4、乙三九及び証人中村)、中古の原告製の海苔自動包装機をオーバーホールして販売した事例が三台ある(同表21及び38の各一台は乙三九及び証人中村、25の一台は甲一三、検甲二の1~3、乙三九、証人中村及び証人東條〔第二回〕)ところ、被告の行ったオーバーホールとは、原告製品の全体を点検して、回転刃やチェーン駆動、シールロールの交換、放射状ガイド(誘導樋)のレール磨き、部品交換、全体塗装等をして新品に近い状態にすることであるから(証人中村)、右改造及びオーバーホールは実質的に生産と同視するのが相当である。そして、右のうち、1、4、8の各一台ずつについては改造後の構造がイ号物件と同様であり(争いがない。)、その余もイ号物件又はロ号物件と同様か、より本件発明一及び二の実施例に近い構造である(弁論の全趣旨)から、右各行為は本件発明一及び二の実施(生産及び譲渡)に該当すると認められ、これが原告の許諾に基づくものであると認めるに足りる証拠はない。

3  賠償すべき損害の額

証拠(甲一三~一六、証人東條〔第二回〕)によると、原告は、原告製造の海苔自動包装機を、昭和五三年には、八切用あるいは一二切用で標準仕様のものを約五〇〇万円で販売していたこと、昭和五六年には一二切用のものを約六二二万円で販売した事例があり、八切と一二切の双方の切断移送機構をカセット方式で交換して使用する形式のものを約七五〇万円で販売したことが認められるが、原告が海苔自動包装機を製造販売した場合に得る利益の額を認めるに足りる証拠はなく、被告が被告物件の製造販売等前記実施行為をしなかったとしたら原告が被告の各顧客に対して海苔自動包装機を販売しえたと認めるに足りる証拠もない。また、被告が、被告物件の製造販売等前記実施行為により得た利益の額を認めるに足りる証拠もない。

他方、右の原告の海苔自動包装機の販売価格、被告が昭和五六年にロ号物件を三三〇万円と見積もった事例があり、昭和五八年にハ号物件を六七〇万円と見積もった事例があること(甲一八、一九、証人中村)、被告が原告製品をオーバーホールした場合の価格は概ね一〇〇万円以下であり、切れ数を変更する場合も同様であること(証人中村)、本件発明一、二は、海苔自動包装機全体に関するものではなくその一部分である切断直後の海苔送り機構(本件発明一)及び切断移送機構(本件発明二)に関するものであること並びにその発明内容を総合して考えると、本件発明一及び二を合せた実施料相当額は、被告物件の製造販売については、イ号物件、ロ号物件及びイ、ロ、ハ号の別が不明なもの(計一六台)は各一〇万円、ハ号物件(四台)は各一五万円、原告製品の改造(四台〔前記1、2、4及び8の各一台〕)については各四万円、原告製品のオーバーホール(六台〔前記3、7、27、37、39及び山伝海苔の各一台〕)については各三万円、原告製品をオーバーホールして販売したこと(三台〔前記21、25及び38の各一台〕)については各五万円と認めるのが相当である。

したがって、被告が賠償すべき損害の額は二六九万円(一〇×一六+一五×四+四×四+三×六+五×三=二六九)である。

六  以上のとおりであり、結局、原告の請求は、二六九万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である昭和五九年二月五日から民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。

(裁判長裁判官 庵前重和 裁判官 辻川靖夫 裁判官長井浩一は転補のため署名捺印することができない。 裁判長裁判官 庵前重和)

(別紙)

物件目録一

一 名称 海苔自動包装機(イ号物件)

二 イ号図面の説明

第1図は海苔自動包装機(イ号物件)の平面図、第2図はその海苔の切断送り機構部の平面図、第3図は同じくその側面図である。

三 構成の説明

海苔自動包装機(イ号物件)は、第1図に示すとおり、海苔の切断送り機構部Aと包装装置部Bとからなっており、四列の移送路を有する。

図中1及び2が夫々五枚の回転刃3及び4を並列した回転軸である。これら各回転刃3及び4は、各々が片刃構造をなし、互いにその平坦面が摩接するようにしてある。

5、5及び6、6が上記回転刃3、4によって仕切られる区劃に沿って構成された四列の移送路で、これらは樋状をなしている。これら樋状の移送路は、上記回転刃直後に位置する始端部51、61から包装装置部Bに臨む終端部52、62まで延びておる。そしてこれら四列の移送路は始端部51、61から終端部52、62に向けて、僅かに放射状となしてある。

これら移送路は、互いに隣接する移送路5、6相互の間に高低差を設けてある。即ち、一つ置きの移送路5、5の始端部51、51を上向きに傾斜させて後は水平となしてある一方、移送路6、6の始端部61、61は水平としてあり、終端部62、62で上向きに傾斜させ、各移送路の終端部で同一平面上に位置させてある。

図中7及び8が搬送用の回転軸で、これらは夫々上記四列の移送路の数に対応する数の対をなすチェーンホイール9及び10を装備させてあり、これら対をなすチェーンホイール9、10間に夫々無端チェーン11を架けてある。そしてこれらのチェーンには間隔を保って多くの送り爪12、12……を取付けてある。

上記各移送路5及び6には、夫々上記送り爪12の移動を許容するガイド13、13を形成してある。

イ号図面

<省略>

<省略>

(別紙)

物件目録二

一 名称 海苔自動包装機(ロ号物件)

二 ロ号図面の説明

第1図は海苔自動包装機(ロ号物件)の平面図、第2図はその海苔の切断送り機構部の平面図、第3図は同じくその側面図である。

三 構成の説明

海苔自動包装機(ロ号物件)は、第1図に示すとおり、海苔の切断送り機構部Aと包装装置部Bとからなっており、六列の移送路を有する。

図中1及び2が夫々七枚の回転刃3及び4を並列した回転軸である。これら各回転刃3及び4は、各々が片刃構造をなし、互いにその平坦面が摩接するようにしてある。

5、5及び6、6が上記回転刃3、4によって仕切られる区劃に沿って構成された六列の移送路で、これらは樋状をなしている。これら樋状の移送路は、上記回転刃直後に位置する始端部51、61から包装装置部Bに臨む終端部52、62まで延びておる。そしてこれら六列の移送路は始端部51、61から終端部52、62に向けて、僅かに放射状となしてある。

これら移送路は、互いに隣接する移送路5、6相互の間に高低差を設けてある。即ち、一つ置きの移送路5、5の始端部51、51を上向きに傾斜させて後は水平となしてある一方、移送路6、6の始端部61、61は水平としてあり、終端部62、62で上向きに傾斜させ、各移送路の終端部で同一平面上に位置させてある。

図中7及び8が搬送用の回転軸で、これらは夫々上記六列の移送路の数に対応する数の対をなすチェーンホイール9及び10を装備させてあり、これら対をなすチェーンホイール9、10間に夫々無端チェーン11を架けてある。そしてこれらのチェーンには間隔を保って多くの送り爪12、12……を取付けてある。

上記各移送路5及び6には、夫々上記送り爪12の移動を許容するガイド13、13を形成してある。

ロ号図面

<省略>

<省略>

(別紙)

物件目録三

一 名称 海苔自動包装機(ハ号物件)

二 ハ号図面の説明

第1図は海苔自動包装機(ハ号物件)の平面図であって、切断移送装置部分を太い実線で示し、切断移送装置をセットすべき機台を細線にて示している。

第2図はその正面図である。

第3図は切断刃とレールの拡大平面図であって、レール上流端の突起は図面の都合上、省略してある。

第4図は第3図のA-A線に沿う断面図であって、切断直後のレールは水平に延びている。

第5図は第3図のB-B線に沿う断面図であって、切断直後では突起が上向き傾斜し、レールは水平に延びている。

符号の説明

1 切断移送装置 2 機台

3 送入装置 4 包装装置

5 切断刃 6 押し片

7 チェン 8 前方スプロケット

9 後方スプロケット 10 スプロケット取付軸

11 切断刃取付軸 12 スプロケット駆動歯車

13 切断刃駆動歯車 14 原動歯車

15 原動歯車 16 モータ

17 中間歯車 18 伝達軸

19 高位レール 20 低位レール

21 突起 22 ヒータカバー

23 海苔押え 24 提手

25 案内面

三 ハ号写真の説明

第1図はヒータカバーを回動して切断部を露出した切断移送装置の平面写真

第2図は切断移送装置の正面写真

第3図は切断刃の送り込み側を示す拡大写真

四 構成の説明

海苔の切断移送装置1は、四列の移送路を有するカセット(八切用)と、六列の移送路を有するカセット(一二切用)からなり、これらカセットを交換可能としてある。これらカセットは移送路、回転刃及びチェーンの数が相違するだけである。以下は一二切用のカセットの例で説明する。前記ハ号図面及びハ号写真も一二切用のカセットの例のものである。

切断移送装置1は機台2の送入装置3と包装装置4の間へ着脱可能に連結されている。

切断移送装置1には上下一対となった七枚の円板状切断刃5、5と、各切断刃の間を通って前後に張られ等間隔に押し片6を取付けた六本のチェン7を具えている。チェンを支持している前後のスプロケット8、9の下流側の取付軸10及び切断刃の取付軸11は軸端に夫々に駆動歯車12、13を具えている。

機台2には切断移送装置1の駆動歯車12、13との対向位置に原動歯車14、15を配備し、モータ16の出力軸の回転を中間歯車17、伝達軸18を経て各原動歯車14、15に伝達し、原動歯車に噛合している駆動歯車12、13を回転させる。

チェン7は上流から下流へ向かって放射状に拡がる様に張られ、各チェン毎に一対のL型断面のレール19、20が対向して配置される。レールの高さは後端では海苔搬送面aより二〇mm高い同一高さに揃っているが、前端は交互に高さを違えており、その下位側のレール20は、第4図のとおり、切断刃5の切り終り端から四六mm離れた位置を始点としてレール全長の半分までは水平に伸び、その後は後端まで緩やかに上昇している。

上位側のレール19は、第5図のとおり、切断刃5の切り終り端から一一三mm離れた位置を始点とし、且つカッターの切断高さより二〇mm上昇した位置から全長が水平に伸びている。

各レール19、20の始端には一対の角状の突起21が斜め下向きに取付けられ、突起先端は海苔搬送面aより低めて切断刃の送り込み側まで伸び、搬送面の高さで送られて来て、切断刃で切断された海苔片を受け、レール19、20の高さまで案内するものである。切断刃5の上方はヒータカバー22で覆って切断箇所を加熱し、レール及び突起の上方には海苔押え23を配備して、海苔片の嵩ばりを一定厚さに制限している。

五 作用の説明

切断移送装置の両側面に備えた提手24を持って機台2上へ置くと、駆動歯車12、13は機台の原動歯車14、15と噛合し、直ちに運転可能となる。

機台の送入装置3から送り込まれた海苔シートを案内面25に沿って横送りすると、チェン7に一定間隔で取付けた押し片6が海苔を押して切断刃5へ送り込む。

切断刃5によって切断された海苔片は、突起21に掬い上げられてしばらくその儘で進み、その後、突起21からレール19、20へ乗り移って押し送られ、包装装置4へ放出される。

ハ号図面

<省略>

<省略>

ハ号写真

<省略>

1号機送り装置図

<省略>

2号機送り装置図

<省略>

(別紙)

被告物件販売一覧表

原告の主張 被告の認否等

販売先 販売年昭和 物件及び台数 認める台数 事情

1 宝食本舗 53 ロ号1 ロ号1 55 イ号1 客先にある原告製品(12切用)1台について、既存のレールを利用し、カッター、チェーン等を減らして、8切用に変更する改造をした。構造はイ号物件と同じ。

2 松谷海苔 53 2 12切用原告製品2台販売。うち1台は1下段と同様の改造をした。

3 神戸漁協 53~54 1 客先にある原告製品1台をオーバーホールした。

4 岡本要治郎商店 イ号1 1下段に同じ。 ロ号1 ロ号1

5 (有)いづみ商店 55 1 ロ号1 商号は、いづみ食品である。

6 モリタ海苔 1 ロ号1

7 本井海苔 54頃 2 原告製品2台をオーバーホール及び1下段と同様の改造をして販売した。

8 丸大大森海苔 イ号1 1下段に同じ。 52~53 ロ号1 ロ号1 販売時期は56年11月

9 みえ漁連販売(株) 56 1 ハ号1 販売時期は57年6月

10 朝日海苔本舗 57 1 ハ号1 販売時期は56年10月

11 (株)伊勢湾海苔 53頃 1 原告代理店として原告製品販売

12 中野商店 1

13 山忠食品 53 1

14 中日海苔 56 1

15 奥庄 56 1

16 荒木食品 1

17 駒屋 55 1 ロ号1

18 尾河商店 56 1~2 イ号1

19 小島商店 56 1

20 大須賀商店 56 1

21 白子伊藤 53~54 1 中古の原告製品1台を販売(包装機構を改造したが、切断移送機構には手を加えていない。)

22 大野海苔 56 1 イ号1 販売時期は57年3月

23 淡路島海苔 1 ロ号1 商号は淡島商店である。

24 日之出海苔 1 ロ号1

25 三福海苔 ロ号1 中古の原告製品1台を整備して販売した。

26 前田海苔店 1

27 北村海苔店 1 原告製品1台を1下段と同様の改造をして販売した。

28 島崎海苔店 1 原告代理店として原告製品販売

29 西島海苔店 1 ロ号1

30 藤田海苔店 1 ロ号1

31 女王海苔食品 1

32 丸政商店 1

33 高橋コンブ 1

34 七福屋(株) 2 ハ号2

35 (株)磯小判 1

36 (株)駿河屋 1 ロ号1

37 後藤海苔 55 1 原告代理店として原告製品販売

38 長谷川商店 1 原告代理店として原告製品販売

39 丸源網島 52 イ号1 52 ロ号1 客先にある原告製品2台について包装機構を修理改造したが切断移送機構は原告製造当時のまま

40 (株)富田商店 1 原告代理店として原告製品販売

合計 47~48 17

<51>Int. Cl.3A 23 i <52>日本分類 35 B 122 日本国特許庁 <11>特許出願公告

昭45-37067

<10>特許公報

<44>公告 昭和45年(1970)11月25日

発明の数 1

<54>海苔の自動連続包装装置に於ける切断直後の海苔送り機構

<21>特願 昭43-40996

<22>出願 昭39(1964)7月27日

<62>特願 昭39-42712の分割

<72>発明者 田中繁雄

広島市基町1

<71>出願人 東和製機株式会社

広島県安芸郡瀬野川町大字中野4238の1

代表者 田中春雄

代理人 弁理士 吉村悟

図面の簡単な説明

第1図は本発明機構を適用した海苔の自動連続包装装置に於ける切断送り込み機構を示す側面図、第2図は同平面図、第3図は第1図及び第2図に於けるA-A線部分で縦断した拡大図である。

発明の詳細な説明

海苔を連続的に移送し、これを従前周知の包装装置にまで移送して自動的に包装する海苔の連経包装装置は既に実用化されているところであるが、この従前の装置では予め寸断した海苔片を人の手をて移送路上に供給したければならなかつた。この欠点を改良する為には切断後の海苔片を直接包装装置への移送路上に供給すること、即ち切断後の移送を連続且自動化すればよいのであるが、これが後述する海苔の物質の故に種々困難を生じ未だ開発されていない。この物質とは主として、海苔の各片が極めて軽量であること、積層状態に於ても挟圧すると薄片が裂損し易いこと、各薄片が積層状態に於て密着していないこと、隣接する積層片相互の平面に均一性がないこと、各薄片の滑り摩擦が甚だ大きいこと等である。従つて寸断した状態の各積層片を揃えたまま送るに当つてはそれを挟圧することができなく、又これを廃して送る場合も軽量であることと、滑り摩擦が大きいことに原因して円滑な作業を遂行し得ない欠陥がある。即ち寸断した際、各隣れる寸断片同志が摩接しこれらの円滑な移送に支障を与えるのである。

発明者にはの切断後の海苔片を互に分離して送ることにより上記海苔の物質からくる不都合を回避する事を考え「夫々の平坦面で互に摩接するようにした片刃構造からなる一対の回転刃を並列した上下の回転軸と、此等各対の回転刃の切断面によつて区画される各空間を始端部として放射状に延長設置される誘導樋と、該誘導樋に沿つて寸断された積層海苔片を移送する為の部材とから成り、前記誘導樋は切断直後の行程部分で互に隣設する樋ごとに交互に高低差を付与して配置し且夫々の内法幅員について各切断海苔片の幅より大なる幅員を与えるべく垂直面に於て適宜の重なりを保持させ、此等高低差を有する誘導樋は少なくとも搬送終端に達する迄の間に同高位に復元させて構成し、更に積層海苔片の移送部材は各放射状をなす誘導樋に沿つて移動させるべく設けるとともに移送部材は少なくとも上下に於て回転刃の回転軸間を左右に於ては対をなす切断刃間を通過すべく循環路を設定したことを特徴とする海苔の自動連続包装装置に於ける切断送り込み機構」を提案した(この機構については特公昭43-11743号によつて公告されている)。而してこの機構の誘導樋に包装装置の移送路を接続することにより海苔の自動連続包装装置が構成される。本発明では上記送り込み機構において最も基本的となる切断直後の海苔送り機構を提供するもので、この切断直後の海苔送りが解決できて始めて自動且連続的に切断海苔片を包装機構に送り込むことができるようになつたものである。

この為に本発明では夫々の平坦面で互に摩接するようにした片刃構造からなる一対の回転刃の直後に占位する移送路を前記回転刃によつて区劃される区分毎に設け、これら移送路毎に交互に高低差を付与すべく前記移送路の始端の上下の指向方向を交互に相違させ隣接する移送路が同一平面を構成せざるべくなし、該移送路に沿つて移動する移送部材を以つて切断海苔片を移送路上を移送すべくなしたことを特徴とする。

以下本発明の特徴を図に示した実例によつて説明すると1及び2は夫々多数の回転刃3、3……及び4、4……を並列した回転軸で互に矢標方向に回転する。各回転刃3、3……及び4、4……は何れも片刃構造をなし、互にその平坦面が摩接するようにしてある。一対の回転刃3、4によつて仕切られる区画に沿つて移送路が設けられるが、此の移送路は互に隣接する移送路相互の間に高低差を有する。図に於いて5、5……は高位を占める移送路、6、6……は低位を占める移送路である。この為本発明の場合は夫々の移送路の始端即ち回転刃の直後の位置に於いて上下方向の指向性を交互に相違させたのである。図に於いては移送路5、5……の始端部5'は水平を維持し、移送路6、6……の始端部6'は下向きに傾斜しているのである。上下に高低差を有する移送路5、5……及び6、6……は上下方向に於いて互に重なる部分D、D……を有しこれらの重なり合う部分の中央部Cが切断面の延長方向となるようにしてある。移送路は僅かに放射状に配置され、全ての移送路を同一平面上とするG位置に於いて相互に隣接する寸断片が接触せざるようになしてあるが、放射状でなくても、交互に上下に高低差を持たせた移送路の中間部を切断分離し、この部分を拡散することによつて隣接する寸断片の間隔をとることもできる。7及び8は搬送用の回転軸でこれらには夫々チエーンホイール又はブーリー等の適当な駆動輪9及び随動輪10が多数装備される。11は此等の各対の駆動輪9及び随動輪10の間に架装された条帯で図の場合チエーンが用いられている。此等のチエーン11、11……には夫々適当な間隔を保つて屈曲弾条からなる押進部材12、12……が取付けられる。

斯から構成からなる本発明機構によれば回転刃3及び4によつて寸断された積層海苔片は移送路5、6の始端5'及び6'に於いて上下に高低差を付与し、E点に於いて再び水平となしF点より再び上り勾配を以つてG点で同高位にしてある。ここで本発明機構の最も特徴とするのは切断した積層海苔片を同一平面上を移送すれば各隣接する海苔片が互に摩接し、円滑な夫々の独立移送が得られないからこれを避ける意味で、切断直後に於ける移送路の始端5'及び6'の交互の指向を相違させ、上下に分離したことにある。

叙上の如く本発明機構では切断直後に於いて切断した寸断積層海苔片を上下に高低差を付与したから、各積層海苔片を、互に隣接する海苔片と摩接する惧もなく、従つて摩接による裂損を生ずることなく、而も積層状態を乱すこともなく円滑に夫々を独立して移送することができる実益効果を有する。

特許請求の範囲

1 夫々の平坦面で互に摩接するようにした片刃構造からなる一対の回転刃の直後に占位する移送路を前記回転刃によつて区劃される区分毎に設け、これら移送路を互に隣接する移送路毎に交互に高低差を付与すべく前記移送路の始端の上下の指向方向を交互に相違させ隣接する移送路が同一平面を構成せざるべくなし、該移送路に沿つて移動する移動部材を以つて切断海苔片を移送路上を移送すべくなしたことを特徴とする海苔の自動連続包装装置に於ける切断直後の海苔送り機構。

<省略>

<省略>

<省略>

<51>Int. Cl. A 23 l <52>日本分類 35 B 122 <19>日本国特許庁 <11>特許出願公告

昭48-1515

特許公報

<44>公告 昭和48年(1973)1月18日

発明の数 1

<54>海苔の自動連続包装装置に於ける切断移送機構

<21>特願 昭42-45814

<22>特願 昭39(1964)7月27日

特願 昭39-42712の分割

<72>発明者 田中繁雄

広島市基町1

<71>出願人 東和製機株式会社

広島県安芸郡瀬野川町大字中野4238の1

<74>代理人 弁理士 吉村悟

図面の簡単な説明

第1図は本発明機構を適用した海苔の切断送り込み機構の一実施例を示す側面図、第2図は同平面図、第3図は第1図及び第2図に於けるA-A線部分で縦断した拡大図、第4図は搬送用回転軸部に於ける一部縦断拡大平面図である。

発明の詳細な説明

本発明は味付海苔等に於てよく見られる小袋への包装装置に於いて包装に先立ち切断をなし切断された海苔の搬送を的確に行うようにした機構に関するものである。

本発明の特徴は特に海苔の場合に於てその機能果が顕著に発揮されるものである。一般に味付海苔の如く寸断しその数枚を一単位にして防湿の為に包装する場合にあつては切断と、これに引続く爾後の包装の為の作業を連続且自動化する上で海苔の特質の故に種々の困難を生ずるものである。この特質とは主として、海苔の各片が極めて軽量であること、積層状態に於ても挾圧すると薄片が裂損し易いこと、各薄片が積層状態に於て密着していないこと、隣接する積層片相互の平面に均一性がないこと、各薄片の滑り摩擦が甚だ大きいこと等である。従つて寸断した状態の各積層片を揃えたまま送るに当つてはそれらを挾圧保持して搬送することが困難であり、又これを廃して送る場合も軽量であることと滑り摩擦が大きいことに原因して円滑な作業を遂行し得ない欠陥がある。

本発明では此等の点を考慮して高能率の機構を提案するもので、積層海苔を複数の積層海苔片に切断後、交互に少くとも傾斜部を形成した分離案内路に導き且つ相隣れる積層海苔片の寸断片を高底差を附与した誘導樋に導くようにし、この誘導樋を放射状に延長設置させた点に特徴づけられる。

以下本発明の特徴を図に示した実例によつて説明する。

図中1及び2は夫々多数の回転刃3、3……及び4、4……を並列した回転軸で互に矢標方向に回転する。各回転刃3、3……及び4、4……は何れも片刃構造をなし、互にその平坦面が摩接するようにしてある。図には示してないが略方尺の海苔は予め積層されたまま短冊状に切断され、その長手方向が回転軸1、2の方向と平行する方向に置かれて前記回転刃列に押し込まれるものである。第1図及び第2図に於いて二本の二点鎖線で挾まれる5は分離案内路で、回転刃3、4によつで仕切られる区画に沿つて伸びる複数個の傾斜部6と水平部7とを含む。傾斜部6及び水平部7は交互に設けられ回転刃3、4に近い始端部分は夫々同高位にあり先に行くに従つて高低差が生ずる。又傾斜部6、水平部7の中央部には寸断された積層海苔片を押進する為の後述する押進部材の通過を許容する通路が形成される。8、8……は前記傾斜部6に連らなる低位を占める誘導樋、9、9……は前記水平部7に連らなる高位を占める誘導樋で、第3図に示すように互に重なり合う部分D、D……を有し、これらの重なり合う部分の中央部Cが積層海苔片の切断面の延長方向となる。此等の各誘導樋8、9ともL字型断面の対向壁をもつて構成せられ、中央部には寸断された積層海苔片を押進する為の後述する押進部材の通過を許容する通路が形成される。此等の各樋8、9は何れも互に平行には配置せられず僅かに放射方向をとり、搬送行程の終端域では同一の水準面を形成するように高低差なく設置される。従つて終端部では前述の全ての重なり合い部分Dの総和に応じただけ全幅員に於て増加することとなるのである。10及び11は搬送用の回転軸でこれらには夫々チェーンホイル又はブーリー等の適当な駆動輪12と随動輪13が多数装備される。一対の駆動輪12と随動輪13とを連ねる方向は前述の樋に形成された通路と夫々平行するようにしてあるので、此の為に各輪をチェーンホイルを以つて形成する場合には第4図示の如く自在軸承を介して軸に取付けることが望ましい。14は此等の各対の駆動輪12及び随動輪13の間に架装された条帯で図の場合チェーンが用いられている。此等のチェーン14、14……には夫々適当な間隔を保つて屈曲弾条からなる押進部材15、15……が取付けられ、前述の通路を経由しての循環移動により寸断された積層海苔片が樋に沿つて押進されるわけである。

図示の場合分離案内路5と誘導樋8、9は夫々一体的に形成し分離案内路5の製作を簡易化してあるが夫々独立して形成することも出来る。例えば水平部7、7……としては長方形状をなした平板又は上面が長方形状をなした台を使用し、傾斜部6としては長方形状をなし傾斜又は途中に屈曲部を形成した板又は上面を傾斜となした台を使用する。傾斜面は積層海苔片の進行方向に対して直線状であつても曲状であつてもよい。図示の場合誘導樋8は傾斜部6からE点まで水平で、E点から上り勾配となつてF点で誘導樋9と同高位にしてある。

上記した本発明機構に依れば回転刃3及び4の矢標方向の回転により寸断された積層海苔片はその直後分離案内路5に導かれて相隣れる寸断片の移動方向が上下に分岐される為相隣れる寸断片は互いに海苔の特質の故に滑り摩擦が大きくても引つかかりを生じたり切損裂損したりすることなく、極めて円滑に積層状態を崩すことなく搬送される。従つて各寸断片は互いに影響されることなく切断されたの揃つた状態を維持し斉一状態で誘導樋に導かれ且つ包装機構に導かれ円滑な作業下に包装され得る。

叙上の如く本発明切断移送機構は積層海苔片を切断後、交互に少くとも傾斜部を形成した分離案内路に導き相隣れる海苔の寸断片を高低差を附与した誘導樋に導くような構成であるから寸断された積層海苔片の寸断片は揃つた状態で確実に分離せられ、各組の寸断片を斉一したままの状態で引続く包装機構へ送ることが可能となり包装機構の作動に寄与するところが大きいことは勿論、搬送上至難な海苔の搬送を寸断積層したままの状態で送り得る上で実益する効果大なるものがある。更に誘導樋を放射状に延長設置させたから、各誘導樋の終端を全て同高位置に揃えることができ、この誘導樋に交叉する一本の搬送機構上に各海苔片を等間隔をもたせて移し換えることができる効果を有する。

<57>特許請求の範囲

1 積層海苔片の移動域に対して上側と下側に対向させて並設した一対の回転軸と、片刃構造からなりその平坦面を少なくとも上記移動域で摩接させて対を構成しこの複数対を前記回転軸に間隔的に配設した切断刃と、交互に少なくとも傾斜部を形成し前記切断刃により切断された積層海苔の相隣れる寸断片に高低差を附与し各寸断片を分離する前記切断刃の直後に位置する分離案内路と、上記分離案内路に高低差を附与した始端部を対応させてなる誘導樋と、前記切断刃、分離案内路、誘導樋に沿つて積層海苔片を移送する為の部材とから構成し上記誘導樋を放射状に延長設置させたことを特徴とする海苔の自動連続包装装置に於ける切断移送機構。

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

特許庁 特許出願公告

35 B 122<1>、<2> (74 B 12) 特許公報 昭43-11743

公告 昭43.5.17

海苔の自動連続包装々置に於ける切断送り込み機構

特願 昭 39-42712

出願日 昭 39.7.27

発明者 田中繁雄

広島市基町1

出願人 東和製機株式会社

広島県安芸郡瀬野川町大字中野4238の1

代表者 田中春雄

代理人 弁理士 吉村悟

図面の簡単な説明

第1図は本発明機構の主要部を示す側面図、第2図は同平面図、第3図は第1図及び第2図に於けるA-A線部分で縦断した拡大図、第4図は搬送用回転軸部に於ける一部縦断拡大平面図である。

発明の詳細な説明

此の発明は海苔又はこれに類する取扱条件が要求される簿片について、切断作業と爾後の包装の為の搬送とを自動化したものである。

本発明の特徴は特に海苔の場合に於てその機能と効果が顕著に発揮されるので以下その実例を以つて詳述するが、一般に味付海苔の如く寸断しその数枚を防湿の為に包装する場合にあつては切断と、これに引続く爾後の包装の為の作業を連続且自動化する上で海苔の物質の故に種々の困難を生ものである。この物質とは主として、海苔の各片が極めて軽量であること、積層状態に於ても挾圧すると薄片が裂損し易いこと、各簿片が積層状態に於て密着していないこと、隣接する積層片相互の平面に均一性がないこと、各簿片の滑り摩擦がだ大きいこと等である。従つて寸断した状態の各積層片を揃えたまゝ送るに当つてはそれらを挾圧保持して搬送することが困難であり、又これを廃して送る場合も軽量であることと滑り摩擦が大きいことに原因して円滑な作業を遂行し得ない欠陥がある。

本発明では此等の点を考慮して高能率の機構を提案するもので、切断後の積層海苔片を切断の直後に、互に高低差を附与した誘導樋に導き、且此の誘導樋はその始端より終端部に向い放射方向に拡げ終端部では少くとも同一平面上の高さに復元して並列となし海苔の積層片を斉進して包装機構部分に送り込むようにした点に特徴付けられ、而も他の特徴としては切断後の積層海苔片は回転切断刃の間を通過し同様放射方向に移動循環する移動部材により積層切断海苔片を移送させてゆくようにした点にある。

以下本発明の特徴を図に示した実例によつて説明すると、1及び2は夫々多数の回転刃3、3・・・及び4、4・・を並列した回転軸で互に矢標方向に回転する。各回転刃3、3・・及び4、4・・は何れも片刃構造をなし、互にその平坦面が摩接するようにしてある。図には示してないが、略方尺の海苔は予め積層されたまゝ短冊状に切断され、その長手方向が回転軸1、2の方向と平行する方向に置かれて前記回転刃列に押し込まれるものである。一対の回転刃3、4によつて仕切られる区画に沿つて誘導樋が設けられるが、此の誘導樋は本発明の場合互に隣接する樋相互の間に高低差を有する。図に於て5、5・・は高位を占める誘導樋、6、6・・は低位を占める誘導樋である。而して此等の各誘導樋5及び6は上下方向に於て互に重なり合う部分D、D・・を有し、これらの重り合う部分の中央部Cが切断面の延長方向となるようにしてある。而して此等の各樋ともL字型断面の対向壁をもつて構成せられ、中央部には寸断された積層海苔片を押進する為の後記部材の通過を許容する通路が形成される。此等の各樋5、6は何れも互に平行には配置せられず僅かに放射方向をとり、搬送行程の終端域では少くとも同一の水準面を形成するように高低差なく設置される。従つて終端部では前述の全ての重なり合い部分Dの総和に応じただけ全幅員に於て増加することとなるのである。7及び8は搬送用の回転軸でこれらには夫々チェーンホイル又はブーリー等の適当な駆動輪9及び随動輪10が多数装備される。一対の駆動輪9と随動輪10とを連ねる方向は前述の樋に形成された通路と夫々平行するようにしてあるので、此の為に各輪をチェーンホイールを以つて形成する場合には第4図示の如く自在軸承を介して軸に取付けることが望ましい。11は此等の各対の駆動輪9及び随動輪10の間に架装された条帯で図の場合チェーンが用いられている。此等のチェーン11、11・・には夫々適当な間隔を保つて屈曲弾条からなる押進部材12、12・・が取付けられ、前述の通路を経由しての循環移動により寸断さりた積層海苔片が樋に沿つて押進されるわけである。

図示の場合誘導樋5と6とは回転刃3及び4が互に相接する切断部分より一方を下降させて傾斜させE点を転位屈曲部として再び水平となしF点より再び上り勾配を以つてG点で同高位にしてあるが、必ずしもこのように構成する必要のないことは勿論である。ただし必要とせられることは切断前の海苔の幅に対し切断後の各寸断片の幅の和はこれと同じであるにも拘らず、誘導樋を以つて搬送を幇助するに当つてはその壁厚及び搬送上の余裕を考慮して高低差を与えることにある。又切断後の海苔片を搬送するために図示の場合その一例として押進手段を以つて遂行させてあるが別の移動条帯上に載せて行つても支障はない。

上記の機構によれば回転刃3及び4の矢標方向の回転により短冊状積層海苔片は寸断されて交互に低の各誘導樋5又は6に区分されて送り込まれ循環する押進部材12に押されて樋に沿つてその終端域にらされるが、誘導樋5と6とについて一旦高低差を与えてあるので、切断後の積層海苔片は搬送上引きかかりを生じたり切損裂損したりすることなく、極めて円滑に積層状態を崩すことなく搬送され、終端域では同時に切断された各組の積層海苔片を斉一したまゝの状態で同時に引続く包装機構部分へ送り込むことが可能で、爾後の包装機構の作動に寄与するところが大きいことは勿論搬送上至難な海苔を寸断積層したまゝ確実に送り得る上で実益効果が多大である。

特許請求の範囲

1 夫々の平坦面で互に摩接するようにした片刃構造からなる一対の回転刃を並列した上下の回転軸と、此等各対の回転刃の切断面によつて区画される各空間を始端部として放射状に延長設置されると誘導樋と、該誘導樋に沿つて寸断された積層海苔片を移送する為の部材とから成り、前記誘導樋は切断直後の行程部分で互に隣設する樋ごとに交互に高低差を附与して配置し且夫々の内法幅員について各切断海苔片の幅より大なる幅員を与えるべく垂直面に於て適宜の重なりを保持させ、此等高低差を有する誘導樋は少くとも搬送終端にする迄の間に同高位に復元させて構成したことを特徴とする海苔の自動連続包装々置に於ける切断送り込み機構。

2 夫々の平坦面で互に摩接するようにした片刃構造からなる一対の回転刃を並列した上下の回転軸と、此等各対の回転刃の切断面によつて区画される各空間を始端部として放射状に延長設置される誘導樋と、該誘導樋に沿つて寸断された積層海苔片を移送する為の部材とから成り、前記誘導樋は切断直後の行程部分で互に設する樋ごとに交互に高低差を附与して配置し且夫々の内法幅員について各切断海苔片の幅より大なる幅員を与えるべく垂直面に於て適宜の重なりを保持させ、此等高低差を有する誘導樋は少くとも搬送終端にする迄の間に同高位に復元させて構成し、更に積層海苔片の移送部材は各放射状をなす誘導樋に沿つて移動させるべく設けるとともに移送部材は少くとも上下に於て回転刃の回転軸間を左右に於ては対をなす切断刃間を通過すべく循環路を設定したことを特徴とする海苔の自動連続包装々置に於ける切断送り込み機構。

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特許公報

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特許公報

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特許公報

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